星のや軽井沢おもてなし研修の達人

星野リゾートの人 05

星のや軽井沢

駒井里美 (入社5年目)

軽井沢をしばしの住処にするお客様の「くつろぎ」を守るためにしんと透き通った空気。日々その表情を変える木立の美しさ。水面に映る、モダンなのに懐かしく思える建物。星のや軽井沢は、すべてが自然と溶け込み、集落として楽しめるリゾート。日本から世界へと広がる星野リゾートの創業の地であり、原点です。
この原点の地で、駒井は「おもてなし研修」のトレーナーとして、全国で働く社員の育成を担当しています。「おもてなし」や「くつろぎ」といった目に見えないものをどう作りだすのか。星野リゾートの「おもてなし」を具現化しているのはまぎれもなく、人。人の心と、ロジックに基づいた行動なのです。訪れるすべてのお客様を「今日からお客様は集落の住人です」と、招き入れるために、スタッフは日々、自分を磨くのです。

「くつろぎ」はお客様との距離のとりかたから生まれる

星野リゾートのすべてに共通する
「くつろぎ」とは、どこから生まれるのか

それを駒井はこんなふうに考えています。「かしこまりすぎても緊張してしまうし、親しすぎても馴れ馴れしく感じさせてしまう。お客様とのちょうどいい距離から「くつろぎ」は生まれると思います。お話し好きな方とは話し、一緒に来られている方との時間を大事にしたい方は、そっと見守る。お尋ねのしかた、相槌の打ち方なども日々の経験をもとに工夫を重ねるよう心がけています」。
接客の基本的なマニュアルはあるそうですが、彼女の仕事はさらにそれを目の前のお客様にどう表現するかにあります。「自分にできることは、いろいろとやりたくなるけれど、相手の方が本当に求めていることは何か、を考えてからアクションを起こすようにしています」。

「星のや東京」総支配人となった
菊池昌枝のもとで

駒井が入社した当時、星のや軽井沢の総支配人だった菊池昌枝は、現在「星のや東京」の総支配人。「菊池さんは、私がずっと尊敬しているおもてなしの達人です。おもてなしを具現化し、ロジカルに伝えることができる人。菊池さんに教えてもらったことが私の基本にあり財産となっています」軽井沢で経験を積んだスタッフは新たに開業した「星のや富士」や「星のや東京」へと着任し、駒井は、引き続きスタッフたちとスキルや振る舞いの目線を揃えながらトレーナーとして頑張っているのです。

教えながら、学ぶ日々

「おもてなし研修」では身だしなみ、所作、言葉遣いといった基本的なことを疎かにせず、常に基本に立ち返ることを大切にし、その上でコミュニケーションスキルを磨くことに注力しています。
「コミュニケーションというのは年齢とは関係なく、個性や能力が表れます。敬語や所作はできていても、臨機応変な会話が今ひとつという方もいます。そんな課題を私自身も自分事として捉え、教えながら気づいたことから学び、その学びの中から新たに教えるようにし、双方が常に進化スキルアップできるようにしています」。スタッフそれぞれが自分らしいゴールを描けるようにと、「普段はフランクに話していますが、研修のときはきっちり切り替えて真剣勝負しています」。
→星のや軽井沢

PROFILE

大学ではシステムエンジニアの勉強をし、就職活動はブライダルか宿泊かで悩んだという駒井。星野リゾートに就職した理由は、「チェックインしたお客様とレストランでも会える。どの仕事もつながっていておもてなしができるマルチタスクが、私にぴったりの考え方だったから」。現在、軽井沢を拠点に全国の星野リゾートの施設で働く社員のトレーニングをしています。

達人を構成する要素

これからの目標は?

目標はいろいろありますが、と、少し考えて語ってくれた駒井。
「スタッフといいことも悪いことも共有できて『駒井さんなら』と、悩んでいることも話してもらえるようになれたら嬉しいです。教えられる側の理解に努めないと、結局はどう教えていいかがわからないですから」スタッフの心の内まで察すること。でも彼女の方法はとてもさりげなくて、自然にみんなのそばにいるような感じです。研修中だけではなく、現場での目配りにもそれが現れています。
「現場には若いスタッフの割合が高いので、そのフォローアップした時の行動がたまたまお客様の目に触れて評価をいただき、私も新たな気付きになっていることもあります。若いということは経験的にはまだまだ足りないのですが、『若いけどしっかりしている』と言っていただけた時にとってもやりがいを感じています」。

同僚
渡邊純也

そのままのフランクさを大切に

明るく気がきいて、誰とでも仲良くなれる女性です。どちらかというと、僕が支えられてるほうですね(笑)。カラオケ仲間のうちの一人で、彼女はバラードからロック、アニソンまで歌える美声の持ち主。年を重ねると自分の悪い面…たとえば駒井さんならフランクになりすぎるとか…そういうのをなんとかしようとするのかもしれないけれど、そのままで居てほしいですね。それは彼女のいい面でもあるから、大事にしてほしいです。

総支配人
赤羽亮祐

動きながら学べる人

駒井さんは根性というか、行動力がある。動きながら学んで、反省しながら動ける人。マニュアルに則りながらも、そこから挑戦していく工夫の精神もあります。アドバイスするとしたら、挑戦するタイミングがくるのを待つのではなく、自分から飛び込んでいけっていうことですかね。機会は与えられていると思いますので。

達人に聞いてみました

Q

軽井沢エリアで、
あまり人には教えたくない
とっておきのスポットはありますか?

星のや軽井沢から歩いて5分くらいのところに、落ち着くカフェがあります。
コーヒーを頼むと、女性のマスターがおせんべいを添えてくれたり、夜勤前だと言うとサンドイッチをくださったり。いつも本当に息抜きさせてもらっています。

Q

「音楽なしには生きていけない人」だと
聞きましたが、その真意は。

もともと、家族が集まると誰かしらが演奏を始める、常に音楽がある環境で育ったんです。ピアノと、吹奏楽部ではフルートもやっていました。歌うのも大好きで、仕事が終わってカラオケに行くのが気分転換になってます。

Q

あなたが気になっている仕掛け人、
サービスや企画は?

学生時代、スターバックスコーヒーでアルバイトをしていました。
そこのサービス、人材育成は特別だったなあと今でも思います。アルバイトでも半年に1度は人事面談もありました。私はシステムエンジニアの学科出身なので、あのアルバイト経験なくして今の私はなかったと思います。

達人にとって"旅"とは

Q

旅とは?

見たことがないもの、新しい何かを見ることです。
そしてそれがわくわくする気持ちにつながること。

Q

今まで行った旅先で一番好きな場所は?

ハワイ!食、海、街、人…全体に肩の力が抜けた雰囲気が漂っていて、自由とわくわく感が共存していますから。

Q

どんな時に旅に出ようと思いますか?

気分転換したいときですね。
とは思いつつ、サービスが気になるホテルを選んでしまいます(笑)。

Q

どんなスタイルの旅が好きですか?

食べることが好きなので、食を巡る旅が好きです。
タイに行ったとき、地元の人がおすすめしてくれたレストランで食べたカレーがおいしかったですね。

Q

旅先に必ずもっていくものは?

ノートとカメラ。
ノートには、ちょっと感じたことを書いたり、チケットを貼り付けたり、スタンプを押したりしています。

これからやりたいことはなんですか?


文:森 綾、撮影:ヒダキ トモコ、イラスト:山田 だり

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