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星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 12 界 日光 組子職人 森 幸雄さん星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 12 界 日光 組子職人 森 幸雄さん

旅の魅力はその地域にあり
星野リゾートの施設の「個性」を担うのは、その土地を象徴するプロフェッショナル、職人さんや生産者さんの存在です。
彼らの仕事や目指すもの、発信力に着目し、日本各地の未知なる旅へとアプローチします。
文・さとうあきこ

緻密で端正な建具技術の発展形 “光”で魅せる「鹿沼組子」緻密で端正な建具技術の発展形 “光”で魅せる「鹿沼組子」

森 幸雄さん

千葉県の建具屋に生まれ、高校卒業後、栃木県鹿沼市で建具、組子修業を積み30歳で独立。平成9年「モリ工芸」を設立し、一般住宅、店舗、旅館などの内装建具、組子を施した仏壇や障子、欄間など数多く手がけ、建具職人のキャリアを確立。近年は「マウンテンサイド ニッコウ」として、インテリアやアート、さらに身近なアイテムとしての「鹿沼組子」の可能性に注目、製品作りに取り組む。

    

組子の歴史は、職人の
特殊技術と美への追求から

「組子」とは、簡単にいうと釘を使わずに木を組み付ける木工技術のひとつで、幾何学模様を組んだ書院障子や欄間など、国内各地で引き継がれています。ここ、鹿沼に「組子」が伝わったのは、江戸時代初期、日光東照宮の造営時のこと。「全国から集まった腕ききの建具職人たちが、仕事の合間にその技術や美しさを競い合い、それが根付いたものではないかと思います」と森幸雄さん。元々、杉やヒノキなど、良質な木材資源に恵まれた地であることから、実用的な建具が製作されると同時に、細工技術や見た目の美しさを追求した「鹿沼組子」へと発展。江戸時代の傑出した職人技は、現在も続く鹿沼の秋祭りの目玉、氏神を祀る華やかな「彫刻屋台」でも見ることができます。

様々な道具を使い分け、
0.1mmの狂いも見逃さない

組子製品は、基本的に無塗装なので、良質な木材を見極める職人の目が求められます。森さん曰く「まっすぐで、柾目のきれいなもの。鮪でいうと“トロ”のような部分だけを使うのが、美しい仕上がりの第一条件」。選別した杉やヒノキ、ヒバなどのムク材から、組子の材料となる細木を作ります。慎重に墨付け(高さや幅などの印)をし、薄いものは0.5mm、厚いものでも12mmぐらいまで、切ったり削ったり細い加工の繰り返しで「実は一番神経を使う作業」と森さん。釘を使わない組子は、0.1mm寸法が違うだけでも組み付けが合わなくなる繊細な世界。「長さの調整、切り込みや角度にあわせた面とりなど、機械だけでなく、鉋やのこぎり、ノミなど色々な道具を使い分けます」。細木の加工ひとつひとつが、組子の完成美を左右するのです。

職人のデザイン表現を彩る
150種以上もある組子模様

「雪見障子ができたら一人前」という厳しい建具修業で技を磨く中、「鹿沼組子」に引きつけられた森さん。「なんといっても模様の美しさが魅力です。花や植物をモチーフに、木片だけで形作る種類は150以上もあり、その組み合わせによってデザインは限りなく広がります」。縁起柄として知られる「麻の葉」をはじめ、「胡麻」「桜」などの基本模様は、菱形や升形の組子の枠“地組み”の空き部分に“葉”の部品をはめ込んでいきます。模様の多くは直線や水平、垂直で表現されますが、中には「七宝」のように曲線を組み入れたものも。曲線の“葉”を作る時は、薄い木片1枚ずつを湯につけ柔らかくし、小さな麺棒に当てて曲げ、微調整しながら組み付けます。凹凸のない連続模様の仕上がりまで、休みなく手わざの極致が繰り返されます。

あらたな可能性を引き出し、
積極的な伝承と職人育成へ

国内屈指の木材、木工業の繁栄地として、鹿沼にはかつて400軒以上の建具屋がありました。純和風建築、特に床の間を備える和室の減少とともに、森さんの「鹿沼組子」への取り組み、考え方も大きく変わってきました。「組子の伝統や技術も、ニーズがあってこそ生かされ伝わるもの。今は、現代の暮らしにあったインテリアや製品作りにも積極的に応えています」。そんな中、組子の表現法に新たな発見もあったそう。「照明の灯を通した組子の美しさ、自然光との対比は今までにない魅力。和洋を繋ぐ空間の装飾、アートとしての可能性も感じています」。さらに森さん、「鹿沼組子」の技術や道具の使い方をオープンにして、職人志願者を広く募っています。「全国にはもの作りを生業にしたい若者が結構いると思うので、製作場所にもこだわりません。興味を持って学ぶ担い手が増えていけばと期待しています」。

組子模様ができるまで

私の愛用品

正確な技を支える多種多様な道具

森さんの工房で驚くのは、道具の数、その種類の多さです。寸法取りの定規や墨付け、木材を切って削る電動機、断面を削り調整、溝や穴、ホゾ(突起)加工には鉋やノコギリ、ノミ、仕上げに使う金槌など、実に多様。建具職人の手となる鉋は何十種類もあり、特に珍しいのが「葉鉋」(写真中央)です。刃がV字になっているので、切断面も美しく、一度に多くの模様の部品を作れます。模様に合わせ、15度、30度、45度など刃の角度違いがあり、「自分の手に馴染むように調整、改良しながら使いこむ、組子には欠かせない鉋です」。

界 日光で楽しむ
鹿沼組子

界 日光では、日光東照宮を代表とする社寺の建築技術から発展した「鹿沼組子」や「日光彫」などの伝統工芸を組子ライブラリーやご当地部屋に取り入れました。繊細で凛とした鹿沼組子の美しさに触れる滞在をお楽しみください。

組子ライブラリー

雄大な中禅寺湖や日光連山を望む「組子ライブラリー」。
パノラマ型の大きな窓には鹿沼組子、日光彫、益子焼など栃木を代表する伝統工芸が装飾され、景色と合わさることにより大きな一枚の絵のように感じられます。ライブラリーの奥には鹿沼組子を使ったカウンターが設置され、季節に合わせたおもてなしを行います。夜は組子の繊細なデザインを活かしたペンダントライトが柔らかい光で空間を照らします。

ご当地部屋:鹿沼組子の間

ご当地部屋「鹿沼組子の間」は、日光の歴史の中で培われた繊細な鹿沼組子の美を、滞在を通して感じられる客室です。組子による男体山が描き出された障子、掛け軸、ランプなどをご用意。ベッドから身体を起こすと見える中禅寺湖や日光連山を鹿沼組子の障子が縁取るその景色はまた格別です。また、お部屋には鹿沼組子の体験キットをご用意しております。手で触れて、そのぬくもりを感じてください。

界 日光

奥日光の入り口に位置し、中禅寺湖のほとりに佇む温泉旅館。雄大な自然に囲まれ、3000坪にわずか33室の贅を尽くした造り。栃木ならではの趣向を凝らした日本会席、重厚な檜の湯船や岩組の露天風呂、伝統工芸「日光下駄」との出会いなど、日常から解き放たれる特別な空間です。

http://kai-ryokan.jp/nikko/