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星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 5 界 鬼怒川 黒羽藍染め 小沼雄大さん星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 5 界 鬼怒川 黒羽藍染め 小沼雄大さん

旅の魅力はその地域にあり
星野リゾートの施設の「個性」を担うのは、その土地を象徴するプロフェッショナル、職人さんや生産者さんの存在です。
彼らの仕事や目指すもの、発信力に着目し、日本各地の未知なる旅へとアプローチします。
文・さとうあきこ

若い感性を魅了する、野州黒羽200年の「藍染め」若い感性を魅了する、野州黒羽200年の「藍染め」

小沼雄大さん

日本を代表する染め物のひとつ「藍染め」は、「藍」という色が主役となり、奥深い美の世界を作り上げます。その色は、藍染ならではの天然の染料と染液、それを操る職人の知識や経験が加わり、はじめて生まれるもの。思い通りの「藍」を出すのは至難の業でもあるのです。栃木県大田原市で、『黒羽藍染紺屋』の暖簾を受け継ぐ小沼雄大さんは、30歳という若き8代目。先代たちが積み上げてきた技術や教えを礎に、同世代にも伝わる「藍染め」を模索しています。

    

一年中藍に染まる繊細な手仕事

小沼さんが生まれ育った黒羽は、栃木県の北東部、那珂川の流れる大田原市にあります。江戸時代、このあたりは河川を使った舟運が盛んであったことから、材木商も数多く、職人たちが着る印半纏は“紺屋”とよばれる染物屋で作られていました。この歴史ある「黒羽藍染」の技術を守り抜いている唯一の店が、創業200年余の『黒羽藍染紺屋』です。藍染めは、染料と染色技術が重要で、染める素材やデザインによっても趣が異なる味わい深いもの。現在、小沼さんが主に手がけているのは、「型染め」という多くの工程を要する伝統技法の染物。下絵のデザインおこしから染め上がりまで、手や指先が頼りの手仕事で、その手は一年中藍に染まっています。

自然の化学反応から生まれる藍

藍染めは、植物に含まれる“インディゴ”という青い色素で染める草木染の一種。『黒羽藍染紺屋』では、蓼藍(たであい)の葉を発酵させた、徳島産の「スクモ」(染料のもと)に、フスマや石灰、日本酒などを加え、藍甕の中でさらに発酵させた液で染めていきます。化学薬品などを使わないこの伝統的な技法は「灰汁醗酵建」(あくはっこうだて)と呼ばれ、藍の葉に住む還元菌を用いた発酵や酸化作用から生まれる、まさに自然界からの贈りものです。「単純に青や紺でもない様々な藍の色は、見飽きることがなく、化学染料にはない色の美しさに魅せられます」と小沼さん。

思い通りの色に染まれば一人前

伝統的な天然の藍染め工程で、色合いを左右するのが、染液をつくる「藍建て」という作業。スクモにフスマや日本酒などを加え攪拌、地中に埋めた藍甕の中で1週間ほど寝かせ、さらに発酵させます。すると、水に溶けない藍が可溶化、液の表面に無数の泡(藍の華)が立ち、ようやく染液の完成です。この間小沼さんは、天候や気温の変化なども踏まえ、液の中の微生物を管理し、藍のご機嫌をうかがいながら染液へとコンディションを整えていくのです。

そしていよいよ染色へ。藍甕の液に浸けた布は、空気に触れることで初めて藍色へと発色し、浸ける回数と時間を調整しながら、好みの濃淡に染めていきます。「色の出方を予測して、思い通りに染まれば一人前」。そんな先代たちの教えのもと、小沼さんの10年に渡る経験と勘が生かされます。「毎回染め上がりは緊張の時です。意図しない、予想外の色や染め上がりになることもあって、一人前にはまだまだです」。

同世代へ向けた藍染めの楽しみ

藍染めの製品といえば、手ぬぐいや暖簾が馴染み深いものですが、『黒羽藍染紺屋』の店舗では、若い小沼さんらしいアイテムも目を引きます。藍染めのスニーカーやTシャツ、紙袋を模したバッグなど、ひとつとして同じものはありません。「自分が欲しいもの、こんなものがあるといいなという視点で試作しながら取り組んでいます。同世代や若い人たちには、日常的に使ってみたいモノから藍染めに興味を持ってもらうのが、自然で気楽だと思うんです」。伝統的な藍染めの唯一無二の魅力をよく知る小沼さん。その自由で伸びやかな感性とともに、新たな紺屋の暖簾を染め上げていきます。

「藍の型染め」ができるまで

私の愛用品

年々味わいが増す「名刺入れ」

濃い藍で染めた豆絞りの名刺入れ。「自作の中でも特に愛用しているひとつで、使い始めて5年ほど。綿の素材が手にしっくり馴染むようになって味わいがでてきました。徐々に生地が柔らかくなり、名刺やカードが50~60枚ラクに入り使いやすい。」。7年前から作り出した名刺入れは、麻の葉、七宝や市松など伝統文様のほか、小沼さんデザインのモダンな藍使いの品も人気。「しっかりした丈夫な作りの本体は、地元の95歳のおばあちゃんに作ってもらっています」。

界 鬼怒川で楽しむ
黒羽藍染

日光東照宮の創建時から培われてきた伝統工芸や、益子焼を代表とする民藝運動が起こり、手仕事が発展してきた栃木。2015年11月にオープンした界鬼怒川では、素朴で美しいとちぎの民藝を客室や館内にモダンに取り入れました。黒羽藍染や益子焼に直に触れていただくことで地域の豊かさを感じていただけると考えています。

ご当地部屋「とちぎ民藝の間」

界 鬼怒川の客室は全48室すべてが「とちぎ民藝の間」。客室のローベッドのベッドライナーと障子に界オリジナルの黒羽藍染を設えました。障子には、栃木県が生産量日本一の麻の葉を模様とし、鬼怒川の流れをイメージした波模様の2種類をはめ込みました。ベッドライナーもモダンな柄が特徴的です。

【夏季限定】黒羽藍染の団扇

夏は自然な風合いが魅力の黒羽藍染の団扇をお部屋にご用意します。水玉や青海波、麻の葉模様など、藍の濃淡による柄もお楽しみいただけます。

【期間】2016年6月1日~8月31日

ショップ

黒羽藍染のコースターや名刺入れ、益子焼のコーヒーカップ、そば猪口など、界 鬼怒川に携わる職人の作品を直接手に取ってご覧いただけます。界 鬼怒川のみで販売されているオリジナルの作品もあり、見るだけでも楽しいショップです。

【営業時間】8:00~21:00

界 鬼怒川

2015年11月10日グランドオープン。鬼怒川の渓流沿いに建つ温泉宿へは、ガラス張りのスロープカーでご案内。エントランスホールには益子焼の水琴窟がお出迎えし、柔らかく澄んだ音が静寂を一層際立たせます。中庭を囲うようにして建つ客室や露天風呂からは、新緑から紅葉まで四季折々の風景を望みながら、ゆったりと流れる時間をお過ごしいただけます。

http://kai-kinugawa.jp/