Vol.1さかなクンは
マーケティングの天才?!

星野:
ぜひ会いたいと思っていたんです。僕、さかなクンってマーケティングの天才だと思っているんですよ。
さかなクン:
ギョギョ!マーケティングの天才?!
星野:
マーケティング用語に「1ワードの法則」というものがあるんですね。売り出したい製品をひと言で説明できることが、最もマーケティングに有効だということです。そして、それが今まで聞いたことのない言葉であれば、なお良い。自分のことを「さかなクン」と命名してしまうのがまず天才的だと思いました。しかも帽子をかぶって、そのネーミングを体現していらっしゃるでしょう。その風貌と名前は必ず、見ている人の心に残ると思います。魚に詳しい人は、あなた以外にもいるかもしれないけれども、あなたのような人は誰もいませんよね。そのアイディアはどこから生まれたんでしょう。昔からそういう奇抜な格好をするのが好きだったんですか? あるいは、小さい頃から目立ちたがり屋だったとか?
さかなクン:
いいえ、自分は小さい頃から引っ込み思案でした。絵を描くのが好きで、興味を持ったものは何でも絵にしていたんです。最初に興味をもったのはトラックでした。小学2年生くらいになるとだんだんお魚やタコが好きになって。それからは、ずっとお魚の絵を描いていて、学校にもお魚の図鑑を持ってきて描いていたので、お魚好きということは自然と学校中に伝わっていました。
星野:
その頃には、もう「さかなクン」という名前を使っていたんですか?
さかなクン:
はい! 中学から高校にかけて、友達からそう呼ばれるようになっていました。頭のハコフグは、テレビに出演するようになってからなんです。きっかけは2001年に『どうぶつ奇想天外!』という人気番組に、お魚の解説者として出演した時でした。普段の姿のままで出るよりも覚えていただけるアクセントをつけた方がいいと思い、エビスダイというお魚を描いてアップリケにして帽子にくっつけて、被りテレビに出演しました。ギョ覧いただきました視聴者の方々が面白がってくださったようです。
星野:
なるほど。
さかなクン:
もっとちゃんと格好を考えようということになったんです。頭のハコフグちゃんのアイデアを思いついたのはその時です。
星野:
ああ、そのお魚はフグなんですね。
さかなクン:
はい。自分が幼魚(子ども)の頃、福島県の小名浜のお魚屋さんの水槽の中で泳いでいたハコフグを見たんです。同じ水槽の中にいるマダイやブリにぶつかって、ふらふらになりながらも、一生懸命泳いでいる姿に心を打たれたんです。元気をもらったんですね。それで、頭にハコフグがいれば自分も何かにぶつかってギョんばれると!

さかなクンはマーケティングの天才?!

星野:
テレビに出ることに抵抗はなかったんですか?魚の学術的な研究を元からやっていらっしゃいましたよね。
さかなクン:
初めはテレビに全く慣れていませんでしたし、そもそもが、とても緊張しているので目が泳いでしまって。でも、事務所の社長から「カメラの奥の何万人もの方の姿を想像して喋るといいよ」とアドバイスをいただきました。「そうなんだ!」と感動して、目の泳ぎがピタッと止まりました。
星野:
さかなクンは、そこでテレビの仕事が向いているかもしれないと思ったんですか?
さかなクン:
はい。周りの皆様に多くを学ばせていただせていただきました。今はむしろ普段の時の方が緊張するかもしれません。「さかなクン」として活動している方が、元気になります。
星野:
なるほど、変身するんですね。キャラクターを演じきるというか。
さかなクン:
2006年から憧れの東京海洋大学の客員准教授となる貴重なギョ(機)会をいただき、白衣を着るようになりました。この格好で居るのが一番落ち着くんです。
星野:
素晴らしいですね。そこまでマーケティングのセオリーに基づいた行動が取れる人って世の中にほとんどいないんです。すごくマーケティングを良く知っている人か、生まれついての天才か、どちらか。
さかなクン:
自分はまったくそういった勉強はしていません…。
星野:
すごいなぁ。やっぱり生まれつきなんでしょうね。

構成: 森 綾
写真: 萩庭桂太